女子トイレを隠しカメラで29回盗撮の元警察官に執行猶予付きの判決との報道

1 報道の概要

当時勤務していた警察署の女子トイレに侵入。 換気扇などに設置したペン型の隠しカメラで29回にわたり 11人の女性を盗撮した元警察官の男に執行猶予付きの有罪判決がなされた。裁判官は「犯行は計画的で成人男性の分別を欠く」と指摘。一方で「当時、精神的に不安定な状態にあったことが 影響を与えた」として2年の求刑に対し、懲役2年・執行猶予4年の判決を言い渡したとのこと。

以上の事案をもとに、問題となる法的論点を解説します。

 

2 警察官の犯行は身内に甘いのか?

よく、警察官の犯罪に対して、警察は身内ということで甘い処分をするという批判があります。これは、ある意味正しい批判だともいえます。発覚せずに、身内の犯罪を隠していたような事例も、何度も報道されています。

その一方、ひとたび発覚した場合は、警察官の犯罪は普通の人よりも、かなり重く処分されます。当事務所でも、自己の職場のトイレで盗撮した人の事件をいくつも扱ってきました。しかし、まだ起訴されて正式裁判となった事案は一つもありません。悪くて罰金刑、場合によっては不起訴としてもらえたこともあります。

本件が正式裁判になったのは、犯人が警官であったことを重く判断されたからに思えます。

 

3 29回にわたり11人盗撮はなぜ分かるのか?

本件は、発覚した事例以外に、多くの盗撮がなされたと報道されています。その数も、非常に具体的です。これは、このような犯罪が行われると、家宅捜索などでパソコンの中身なども調べられ、保存されていた盗撮記録がすべて判明するからです。中には、盗撮のスリルだけを楽しんで、撮影したものはすぐに消去するような人もいます。その場合は、まだ消していないものだけが判明することになります。

 

4 犯行時の精神状態

今回の裁判では、犯行時の精神状態を考慮したと裁判官が述べています。実際、盗撮を行っているときには、会社や家庭で大きな問題が起きていたという人は沢山います。当事務所の事件でも、そういう主張を何度も聞いています。ただ、このような事実は、下手をすると責任逃れの言い訳と思われる場合も多いです。主張の仕方や時期などは、よく考える必要があります。

 

5 本件の弁護活動

本件では、被害者は警察署と、盗撮された各個人です。できるだけ多くの人と示談を行い、何とか罰金で済ませるようにするのが、弁護人の腕の見せ所と言えます。ただ、警官によるこのような犯罪の場合、なかなか示談もうまくいかない場合が多いです。

 

6 盗撮事件を起こした方は、すぐにご相談ください

弊所では、余罪の多数ある盗撮等の性犯罪事件の弁護活動を行ってまいりました。

被害者との示談交渉、性犯罪の治療としての入院、親族との連絡、検察官との交渉まで、あらゆる面でサポートをさせていただきます。

 

執筆者・大山 滋郎の写真

執筆者情報

大山 滋郎Jiro Oyama

弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 代表弁護士