パワハラでうつ病など発症 傷害容疑で男逮捕との報道!?
1 報道の概要
仕事上で関わりがあった40代男性にパワハラをし、うつ病など精神的な傷害を負わせたとして、警察は49歳の会社員の男を傷害容疑で逮捕した。「事実は全く違います」と容疑を否認しているという。
被害者に対して電話やSNSで「申請を間に合わせることがお前の仕事だろ。間に合わなかったら殺すぞ」などと脅迫し、男性に著しい精神的な不安感を与え、うつ病や自律神経失調症の傷害を負わせた疑いとのこと。
以上の事案をもとに、問題となる法的論点を解説します。
2 暴力を振るわなくても傷害罪?
本件では、特に物理的な暴力は振るわれていません。それで、精神的なダメージを与えた場合にも、傷害罪と言えるのかが問題となります。
実際、傷害罪が成立するためには、他人に傷害の結果を与えれば足ります。必ずしも物理的な暴力を使う必要はありません。本件のような「言葉の暴力」でも傷害罪は理論的には成立します。
ただ、これまでは例えば、職場で酷いことを言われてうつになった場合などでも、警察が傷害罪として動くことは、まず考えられませんでした。今回が特に何か酷い事情のある特殊な場合なのか、今後はこのような事案での傷害罪成立が多発するのか、今後の動きを見ていく必要があります。
3 電話やSNSで障害が起きるの?
暴力を振るわない場合も傷害罪になるとしても、本件のような電話やSNSの行為が罪になる犯罪行為と言えるのかも問題となります。
電話等、嫌なら切ればいい(そしてその後は取らなければ済む話)だけですし、SNSに至っては見なければ済む話とも言えます。職場で、逃げられない勤務時間中に、職務命令として上司に直接叱責され続けるのとは状況が違います。
ただ、これが傷害罪になるなら、今後はクレーマーのしつこい電話や、SNSでの悪口で体調を崩したお店の人が出たら、同じように傷害罪の成立も考えられます。
4 本件の弁護活動
今回の傷害罪のような被害者のいる犯罪では、被害者への謝罪と弁償が一番の弁護活動になります。このような事件での被害者側の怒りは大変強く、示談を拒否して絶対に処罰を望むのが通常です。
ただ、本件のような事案では、処罰は恐らく罰金刑程度であり、それを支払えばその後には特に制約はありません。そこで、罰金以上の金額を賠償金として支払うと共に、今後の接触禁止などを契約書に盛り込むことで、示談に応じてもらうようにするのが弁護士と仕事となります。
5 傷害等の事件を起こした方は、すぐにご相談ください
本件は、傷害罪とされていますが、脅したところをとらえて脅迫罪とされてもおかしくない犯罪ですし、脅して無理な仕事をさせようとしたなら、強要罪とも言えます。
弊所では、傷害罪のみならず、様々な類型の犯罪事件の弁護活動を行ってまいりました。
自首の同行、被害者との示談交渉、治療としての入院、検察官との交渉まで、あらゆる面でサポートをさせていただきます。
執筆者情報
大山 滋郎Jiro Oyama
弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 代表弁護士