あおり運転でガスガン発射! 刑罰はどうなるの?

1 報道の概要

令和2年6月4日午後4時半頃、埼玉県越谷市の国道4号で、軽乗用車を運転中の男が、被害者の乗用車の前に突然割り込んで減速し、車の窓を開けてガスガンのようなものを発射し、約1.4キロにわたって蛇行運転などを繰り返しながら発射を続け、停車した被害者に怒声を放った後に車で走り去った、という事件がありました。県警越谷署は、被害者が提出したドライブレコーダーの映像を分析し、暴行容疑などでの立件を視野に捜査をしているとのことです。

いわゆる「あおり運転」に対する新しい罰則を盛り込んだ改正自動車運転処罰法は6月30日に施行となります。

本件は、改正自動車運転処罰法の施行前ですので、警察としては、刑法犯としての「暴行罪」として摘発しようという動きだと思われます。

 

2 暴行罪とは

 暴行罪は、「人の身体に対し不法に有形力を行使する」と成立します。

「有形力」とは、簡単にいえば、目に見える形で、人に暴力を振るう場合をいいます。これにより相手が傷害を負ってしまうと「傷害罪」という、より重たい罪になってしまいます。

暴行罪の法定刑は、「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する」とされています。

暴行罪は傷害に至らない場合の犯罪ですので、傷害の重さはあまり問題とならないことが多く、その処罰の重さは、犯行態様や時間、暴行の程度、被害者の処罰感情の大小、突発的な犯行なのか計画的な犯行なのか、同種前科前歴があるかなどの事情が考慮されて決められます。

初犯で罪も認めている場合、暴行罪で逮捕までされるケースは少ないですが、前科前歴があったり逃亡したりした場合には逮捕までされてしまうリスクが高いといえます。

 

3 報道の事件ではどの程度の刑罰になるか?

上記の記事にある「あおり運転」については、道路交通法違反に該当する可能性が高いです。

暴行罪となり得るのは、「ガスガンのようなものを発射」した行為です。これはガスガンの発射という有形力を行使して被害者へ危害を加えようとするものであり、傷害には至っていないからです。ただ、理屈上は暴行罪となり得ますが、実際にガスガンの弾が被害者の身体に届いたわけではなさそうですので、暴行罪で立件までできるかは検討の余地があると思います。

また傷害には至っていませんが、車の運転中ということもあり一歩間違えれば大事故にもなりかねない非常に危険な行為ですから、被害者との示談が成立しない限りは、初犯であっても罰金刑ではなく懲役刑となる可能性も十分にあります。 

4 早期に弁護士が示談交渉を進めていくことが最良の手段

暴行罪であっても逮捕され、その後、20日間勾留されて警察に拘束されるケースもあります。

そうなってしまうと、社会復帰が遅れてしまい、会社や学校へ行けなくなるということもあります。

また暴行罪として有罪と判断されれば、罰金刑であっても前科がつくことになります。

しかし、被害者又は被害者の保護者との間で、示談が成立すれば、不起訴となり前科がつかない可能性も十分にあります。

暴行事件では被害者の処罰感情が強く当事者では話がまとまらないこともよくあります。

そこで、経験豊富な弁護士を選任し、早期に示談交渉を求めていくことが最良の活動となります。

当事務所は、暴行罪の事案で、これまで、多数の示談・不起訴処分を獲得しております。

もしご自身やご家族が誰かに暴行をしてしまった場合は、当事務所までご相談ください。

 

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執筆者情報

下田 和宏Kazuhiro Shimoda

弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士