かっとなって暴力を振るい、ケガをさせてしまったらどうなる!?
1 傷害罪で県立病院の職員を逮捕との報道
徳島中央警察署は、2020年6月16日、徳島県内の高校に通う女子生徒と50代の男性に暴行を加えけがをさせたとして、傷害罪で、徳島県立病院の職員を逮捕しました。
警察の発表によると、当該職員は、徳島市内の路上で、女子生徒の右腕をつかんで、髪を引っ張るなどの暴行を加え、そのわずか5分後、その女子生徒を助けに来た50代の男性の顔面を1回殴るなどして、それぞれ約7日間のけがを負わせたそうです。警察の発表では、当該職員が女子生徒に「家に来ないか」と声をかけ、女子生徒が「きもい」などと答えたため、それに立腹し、犯行に及んだとされていますが、当該職員は、女子生徒から「反撃された」として正当防衛を主張しているそうです。
2 暴行・傷害行為の刑事処分は?
傷害罪は、暴行行為によってけがを負わせた場合、成立します。誰かを殴ったという行為でも、けがをしなければ暴行罪、けがをすれば傷害罪ということです。法定刑は、暴行罪が、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料、傷害罪が、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
暴行罪や傷害罪は、前科の有無、態様、けがの程度によって大きく異なりますが、いわゆる「あざ」「打撲」くらいであれば、低額の罰金で済むことが多いでしょう。逆に、後遺障害が残るような重篤なけがを負わせれば、初犯でも実刑となる場合もあります。
今回は、約7日間のけがということで、けがの程度自体は軽いと言えますが、女子生徒側の主張が正しければ、明らかに逆恨みですし、被害者も複数いて悪質です。さらに、報道によれば、2017年にも同僚男性にけがをさせているということですから、前科ないし前歴があるかもしれません。そうなると、罰金刑ではなく、正式裁判を経て懲役刑となる可能性もあります。
3 暴行・傷害行為による懲戒処分は?
一般的には、犯罪行為そのものだけでなく、最終的な刑事処分(起訴か不起訴か、罰金か懲役か)などによって、人事上の処分は異なります。公務員の場合、不起訴(起訴猶予)でも何らかの処罰はありえますし、禁固刑以上であれば、執行猶予が付いても自動的に失職します。県立病院の職員は公務員ですから、禁固刑以上であれば失職することになるでしょう。
本件では、3年前の事件で停職6か月の処分を受けているようですから、おそらく懲戒免職になると思われます。もちろん、正当防衛が認められるなどすれば別でしょう。
4 罰金刑、懲役刑、逮捕などを避けるために弊所でできるお手伝い
弊所では、このような暴行・傷害行為のケースで、出来る限り刑事処分や人事上の処分を軽くするためのお手伝いをさせていただいております。
暴行・傷害事件では、基本的に、被害者との示談が重要です。また、示談と言っても、単純に民事上の解決をするのではなく、被害届を取り下げたり、「刑事処分を求めない」といった示談書を取り交わすなど、刑事処分を軽くするための対応が必要です。また、被害者との交渉が満足にいかない場合などは、検察官との交渉が重要になることもあります。
まず被害者との示談については、とにかく誠意をもって謝罪の意思をお伝えすることが重要です。その上で、事件場所に近寄らないなど、生活圏行動圏の変更を行い、安心してもらう必要があります。知人であれば、その方との今後の関係をどうするかという点も重要です。最終的に、損害賠償金、示談金を受け取ってもらい、刑事処分を軽くするための協力をしてもらえないか依頼します。
被害者対応が終われば、あとは、検察官と交渉をし、出来るだけ刑事処分を軽くしてもらえないかどうか交渉します。
被害者と示談が成立し、処分ついて軽くする方向での意見もらえれば、通常は、不起訴(起訴猶予)になることがほとんどです。暴行・傷害事件は、被害者の意向が非常に重要ですから、示談が成立すれば、後遺障害が残るケースでも不起訴となる可能性は十分あります。
弊事務所で取り扱った事件では、被害者が片目を失明したケースでも、示談をして不起訴になりました。不起訴は、起訴されない=懲役や罰金など刑事罰を受けないことを指し、前科がついてしまうことを避けられることになります。
また、不起訴となった場合、それを踏まえての人事上の処分も軽くなる可能性がありますし、懲戒委員会などの聴取の際に、弁護士から意見書を出すこともできます。
5 暴行・傷害行為をしてしまったという方は、すぐにご相談ください
弊所では、これまでも暴行・傷害行為の弁護は多数担当しています。
すでに警察での捜査が進んでいる場合は、弁護活動により示談する必要がありますし、仮に発覚していない場合は、自首することも可能です。ご不安な方は、現状を問わず、すぐにご相談ください。
自首の同行、被害者との示談交渉、検察官との交渉まで、あらゆる面でサポートをさせていただきます。
執筆者情報
石崎 冬貴Fuyuki Ishizaki
弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士