スカート内を盗撮したとして、男性が警察に逮捕されたとの報道!?
1 報道の概要
女性のスカート内をスマートフォンで盗撮したとして、埼玉県在住の男性が警察に逮捕されました。
警察によれば、男性には、3月14日の午後10時前、JR武蔵野線吉川美南駅のエスカレーターで女子高校生のスカートの中をスマートフォンで撮影し、性的な動画を撮影した疑いが持たれています。
事件当時、近くにいた人が不審な行動に気付いて発覚したが、男性は警察官が駆けつける前に現場から逃走していました。しかし、現場に男性のスマートフォンが残されており、その後の捜査で盗撮に関わった疑いがあることがわかったことから、今月の7日に逮捕されました。
男性は、警察の調べに対し容疑を認めているとのことです。
2 盗撮事件における逮捕
本件のような盗撮事件においては、必ずしも逮捕されるわけではない。
仮に犯行現場で取り押さえられても、警察としてはまずは警察署へ任意同行し、取調べなどを行います。そこで素直に認めれば、逮捕されずに帰宅できることも多いです。
一方で、犯行を否認していたり、本件のように現場から逃走していた場合には、逮捕に至るケースがあります。
本件では犯行に用いられたスマートフォンが現場に残されていたため、これが犯人特定のきっかけになったと考えられます。
しかし、仮に現場に何も残さなかったとしても、防犯カメラの映像や、ICカードの利用履歴などから犯人が特定され、後日逮捕に至ることもあります。
3 どのような罪が成立するか
これまでは、盗撮行為は、いわゆる「迷惑防止条例」という条例によって取り締まられてきました。
しかし、2023年7月13日にいわゆる「性的姿態撮影等処罰法」という法律が新設され、以降は同法に規定されている「性的姿態等撮影罪」によって取り締まられることとなりました。
本件においても、性的姿態等撮影罪が成立すると考えられます。
4 新法の施行で何が変わるか
では、これまでの条例に代わって性的姿態撮影等処罰法によって盗撮行為が取り締まられることとなり、具体的に何が変わるだろうか。
一つ明らかなのは、刑罰の厳罰化です。
これまでの迷惑防止条例では「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」という定めが多かった。これに対して新法は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」という法定刑が定められています。両者を比較すれば、より厳しい刑罰が定められていることは明らかです。
そして、新法における厳罰化を受け、警察や検察の対応の変化も予想されます。
上で述べたとおり、これまでは逃走などせず、素直に認めていれば逮捕にまで至ることは少なかったです。
しかし、今後はそのような場合であっても、警察が逮捕に踏み切ることがあるかもしれないのです。実際、素直に認めて取調べに応じていたにもかかわらず、逮捕されたという事案がありました。
また、これまでであれば起訴猶予(不起訴)処分となっていたような事件も、今後は起訴して罰金刑とする検察官が出てくるかもしれないです。
肌感覚ではあるが、多くの事件を扱っていく中で、このような捜査機関における対応の厳格化も感じています。
5 どのように対応すべきか
被害者との示談を中心に弁護活動を展開するという、従前の方針と大きく変わることはないでしょう。
一方で、捜査機関への対応について、これまで以上に慎重な判断を求められることも考えられます。
例えば、これまでは余罪が個別に事件化することは稀であったが、今後もそうとは限らない。また、個別に事件化まではせずとも、常習性があるとして厳しい処分に至る可能性もあります。
すると、余罪について安易に供述してしまうと、より厳しい事態を招いてしまうおそれがあります。嘘を述べることはいけないが、話す範囲や説明方法を工夫するなど、厳しい処分を回避するための対応は十分にあり得ます。
このような捜査機関への対応含め、弁護士とよく相談して方針を検討していく必要性が高まるだろう。
執筆者情報
越田 洋介Yosuke Koshida
弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士