飛行機内で盗撮を行おうとした男性が撮影未遂罪で逮捕との報道!?

1 報道の概要

愛知県から北海道の空港に向かう航空機の中で、女性のスカートの中をスマートフォンで盗撮しようとした疑いで、男性(47歳)が逮捕されたという報道がありました。

男性は、通路を歩いていた20代の女性のスカートの中を撮影しようとしたとして、性的姿態等撮影未遂罪の疑いで逮捕されたとのことです。

今回は、この事件を題材に、7月13日に施行された撮影罪に関する弁護活動を解説します。

 

2 撮影罪が新設されたことで飛行機内での盗撮の取締りが容易になった

報道でも紹介されていましたが、これまで盗撮は、各県が定める迷惑行為防止条例によって取り締まられていました。盗撮をした場所が属する県の条例が、適用されることになります。しかしながら、飛行機の中での盗撮行為は、どの県で行われたかを特定できないことから、処罰できない事例もしばしばありました。

今回の新法(「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」といいます。)が出来たことで、条例ではなく法律で、盗撮行為を禁止することが出来るようになりました。

つまり、飛行機内の盗撮であっても、どの県内で盗撮を行われたか、どの条例の何条を適用するかを問題にすることなく、全国一律で、撮影罪として取り締まることが出来るようになったのです。

 

3 撮影罪とは?

令和5年7月13日、新法が施行されて、盗撮行為が「撮影罪」として取り締まられるようになりました。

撮影罪は、性的姿態等撮影罪ともいい、「性的姿態等」を撮影する行為に成立します。

「性的姿態等」は以下のいずれかと定義されています。要するに、性的な意味を持っているような人の姿(身なりやふるまい)を勝手に撮影することが禁止対象になっています。

① 人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)

② 人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分

③ わいせつな行為又は性交等(刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十七条第一項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態

今回は、女性のスカートの中の下着が②にあたるため、性的姿態等撮影罪によって取り締まられたと考えられます。

 

4 性的姿態等撮影未遂罪とは?

新法は、性的姿態等撮影は、未遂であっても処罰するとしています。カメラを向けたけれども性的姿態等が写っていない・撮影できなかったというような場合や、隠しカメラを持ってスカートに近づいた場合も、性的姿態等撮影未遂罪として処罰される可能性があります。

本件の男性は、この未遂罪の疑いで逮捕されています。スマートフォンの撮影データの中に、下着などをとらえた画像などが無かったため、既遂ではなく未遂として逮捕された可能性があるでしょう。

 

5 留置先はどこになる?

男性は、今回の事件で逮捕されています。罪を認めていて、初犯であれば、釈放になることも多いですが、逮捕され続ける場合、どこが留置場所になるのでしょうか。

捜査本部が設けられている犯罪や事件などは別として、旅行先、出張先で起こしてしまった犯罪については、多くの場合、その旅行先や出張先を管轄する警察署の留置所で留置されます。航空機の中での犯罪は、通常、その飛行機が行き着く先の空港を管轄する警察署になる可能性が高いです。

 

6 撮影罪の弁護活動

撮影罪で逮捕されてしまった男性を弁護する場合、弁護人は、まず男性を釈放するための活動を検討します。男性に家族がおり、同居している場合には、留置先と離れていたとしても連携連絡をとり、ご家族からの協力を頂きながら、釈放活動に努めます。

また、釈放を実現するためにも、不起訴獲得や執行猶予判決を得るためにも、被害者の方との示談交渉が重要です。弁護人が被害者の方に謝罪の意思を伝え、加害者からの謝罪金をお渡しします。初犯の場合、被害者の方から事件のことを許してもらえれば(「宥恕(ゆうじょ)」といいます。)、不起訴になる可能性も十分あります。

航空機内の盗撮事件を弁護する際ネックになることは、被害者の住所が、留置先から遠方になる可能性があるということです。弁護人は、依頼者のいる留置先や住所にも駆けつけるだけでなく、被害者の住所や所在先にも場合によっては赴く必要があります。

 

7 機動力のある弁護活動が必要です。

新法が出来たことで、県をまたぐ交通機関の中で起きた盗撮事件の取り締まりが、今後厳格化することが予想されます(一方で、性的姿態等ではなく、着衣の上からの撮影などは、今後も条例の取り締まりに委ねられることになるでしょう)。ご家族の方としては、自分にとって相談しやすい距離にいるということにとらわれず、迅速に接見や示談での出張や移動に応じられる、機動力のある弁護士を探すことが求められてくるでしょう。

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執筆者・原田 大士の写真

執筆者情報

原田 大士Daishi Harada

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