盗撮を指摘され逃走しようとした際に、けがを負わせた疑いで男性が逮捕されたとの報道!?

1 事件の概要

報道によると、神奈川県警加賀町署は令和4年5月9日、傷害の疑いで、開成町吉田島、会社員の男(64)を逮捕したとのことです。

逮捕容疑は、令和3年10月3日午後6時5分ごろ、横浜市中区のみなとみらい線日本大通り駅のエスカレーターで、男が前にいた20代女性のスカートの中をスマートフォンで盗撮しているのを、同区に住む女性(42)に指摘され、逃走しようとした際、この女性の手を振り払うなどして転落させ、頭などに2週間のけがを負わせたというもので、男は「けがをさせたつもりはない」として、容疑を否認しているとのことです。

 

2 本件で成立する犯罪について

本件は傷害の疑いで逮捕したとのことですので、「傷害罪」ということですが、男は「けがをさせるつもりはない」として、傷害の「故意」を否認しています。

ただし、けがをさせるつもりはなくても、手を振り払うという意思がある場合はこれ自体が暴行の「故意」として、結果的にけがを負わせた場合も「傷害罪」に該当します。

仮に傷害又は暴行の「故意」が認められなかった場合には、「過失傷害罪」が成立する可能性があります。

 

3 傷害罪について

「傷害罪」は、人の身体に傷害を負わせる犯罪です。

傷害罪の法定刑は、「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」ですが、行為態様や傷害の程度により幅のある犯罪です。また、逮捕される可能性が高い犯罪といえます。

傷害罪が成立するためには、傷害又は暴行の「故意」、つまり傷害や暴行をしようとする意思が必要になります。

 

4 過失傷害罪について

逆に、不注意など「故意」がなくても「過失」がある場合は、「過失傷害罪」となります。

過失傷害罪の法定刑は、「30万円以下の罰金または科料」で、懲役刑等はありません。傷害罪と比べると法定刑はだいぶ軽いといえます。

 

5 傷害罪と過失傷害罪の区別

両罪の区別は「故意」か「過失」かの違いによります。

「故意」というのは「意思」の問題ですから、本来は被疑者・被告人にしかわからないものです。しかし、被疑者・被告人が「そのつもりはなかった」といえば常に過失犯となり、故意犯よりも軽い刑罰や無罪になるのは不合理です。

刑事事件の実務では、「故意」の有無は被疑者・被告人の供述だけでなく、行為対応、前後の状況、場所、時間、被害者との関係など客観的な事情を総合的に見て判断します。

本件であれば、エスカレーターで、上にいる男が下にいる被害女性の手を払えば、女性が転落してけがを負うことは予見可能といえそうですので、少なくとも過失傷害罪が成立する可能性は高いといえそうです。あとは、男の認識の程度、具体的な両者の位置関係や男が手を振り払った際の力の程度や態様などによって「故意」の有無を判断していくことになります。

 

6 弊所の弁護方針について

「否認」事件の場合は、被疑者・被告人の言い分をよく聞き、その主張が通るようできる限りのサポートをいたします。

「傷害罪」と「過失傷害罪」では、法定刑に大きな違いがありますので、弊所としても「故意」がないということを主張していきます。
もっとも、傷害罪でも初犯で軽傷などの日常トラブルの範囲内であれば、罰金で終わることがほとんどです。

そして、傷害罪でも過失傷害罪でも、被害者の方と示談をすることにより不起訴となることも十分にあり得ます。

過失傷害罪について争わないのでしたら、被害者の方と適切に丁寧に示談交渉をし、示談の成立を目指すことがもっとも早期かつ現実的な解決となります。

当事務所は、これまで、多数の示談・不起訴処分を獲得しております。

もしご自身やご家族が傷害罪で逮捕された場合は、当事務所までご相談ください。

 

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執筆者情報

下田 和宏Kazuhiro Shimoda

弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士