民家の蔵に侵入し、ふすまなどを盗もうとした男が逮捕されたとの報道!?
1 報道の概要
民家の蔵に侵入し、ふすまや骨とう品など計8点を盗もうとした容疑で、男性(56歳)が逮捕されたという事件が報道されました。
男性は、車を用いて民家に向かい、ふすまや骨とう品を車の外に運び出した後、さらに蔵の中を物色していたところを、蔵の所有者の妻が物音に気付いて声をかけられたため、車で逃走を図ったそうです。しかし、民家から500メートル離れた駐車場で逮捕されたとのことです。
今回は、住居侵入・窃盗罪の弁護活動について解説します。
2 蔵の中を物色してふすまなどを運ぶと、何罪が成立する?
報道からすると、男性は、車にふすまや骨とう品を搬入することに失敗し、手ぶらで逃走を図ったようです。しかし、蔵を物色し、ふすまや骨とう品を蔵から運び出したと思われます。少なくとも、窃盗目的で住居に侵入したとして、住居侵入罪が成立する可能性が高いでしょう。
では蔵を開け、蔵の中からふすまなどを運び出した行為には何罪が成立するのでしょうか?人のいない店に侵入し、レジを探して物色を始めた段階で窃盗未遂罪を認めた有名な判例があります。そうした前例からすれば、蔵の物色をしている時点で、窃盗未遂罪は成立するといえそうです。
では、本件で窃盗罪は既遂として成立するでしょうか。窃盗罪の既遂と未遂を分けるのは、事実的な支配が移転したかどうかだと言われています。自分の車にふすまなどを担ぎこんでいたら、ふすまの事実的な支配が移転しているといえそうですから、既遂の窃盗罪が成立していた可能性が高いです。今回は、運び出したふすまが車の外に置かれたまま男性が逃走しています。運び出したその場所が民家の敷地内か外かで評価も違ってきますが、事実的な支配が移転していないとして、窃盗未遂罪が成立する可能性のほうが高いでしょう。
3 処分の見込みはどれくらい?
窃盗の中でも、住居などに侵入し、財物を盗み出す空き巣などの犯罪は悪質性が高いと評価されます。今回の事件が初犯であれば、骨とう品などが結局所有者の元に返ってきているので、罰金刑で済む可能性が高いです。
しかしながら、前科などがあれば、正式裁判になり、執行猶予が付くか否かが争われる可能性が十分あるでしょう。
4 住居侵入窃盗の弁護活動
まず、今回の事件の弁護を依頼されれば、弁護人は男性の身体を解放する活動に注力するでしょう。その際、ふすまなどの所有者(おそらく蔵自体の所有者)と示談交渉を試みます。住居侵入窃盗は確かに重たい罪ですが、謝罪をし、謝罪金を受け取ってもらい、事件を許して貰うことで、不起訴にまで持ち込める可能性もあります。
ただし、侵入窃盗は余罪をお持ちの方も多く、せっかく身体解放してもまた別の容疑で逮捕され、更なる示談交渉に臨まなければならないことも多々あります。
弁護人は、粘り強く早期段階での示談を試み、不起訴や執行猶予を目指します。
5 お悩みの方はご相談下さい
住居侵入窃盗は、繰り返しているうちに目撃者が現れ、そこから事件が発覚し、逮捕にまで至るというケースが散見されます。
逮捕されることがご心配な方、また逮捕されてしまった方のご親族の方は、まずは弊所までご相談下さい。
執筆者情報
原田 大士Daishi Harada
弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士