盗撮した公務員は、懲戒処分を受けるまで退職できない?
公務員の懲戒と退職について解説します

1 報道の概要

報道によると、露天風呂に入浴中の女性を狙った組織的な盗撮事件で、藤枝署と静岡県警生活保安課、サイバー犯罪対策課は2022年2月9日、児童買春・児童ポルノ禁止法違反と兵庫県迷惑防止条例違反の疑いで三重県の40代国家公務員の男を逮捕したとのことです。この男性は同県にある省庁などの出先機関に勤めているということです。

同署によると、男は全国を股に掛けて活動していた盗撮マニアのグループの一員とみられており、組織的盗撮事件の捜査の中で児童ポルノ盗撮製造への関与が浮上して逮捕されたとのことです。

この記事では、公務員について①盗撮してしまった場合に懲戒処分を受けるか、②懲戒処分を受ける前に退職することはできるかについて解説します。

2  公務員が盗撮した場合に懲戒処分を受けるか

職種によっても異なるところはありますが、人事院は、国家公務員の懲戒について指針を出しております。「人事院事務局長発平成12年3月31日職職―68懲戒処分の指針について

この基準によると、国家公務員が盗撮した場合は、停職又は減給されることが記載されています。

また、地方公務員の場合は、職種ごとに、懲戒処分の指針が定められており、これにそって処分がなされています。

これらの指針に基づく実際の処分は、職種や地位などによっても異なります。たとえば教師など、人の模範になるべき地位にある人などは、懲戒免職となります。

 

3 懲戒処分を受ける前に退職できるか

民間企業であれば、企業と従業員は、民法上の雇用関係で、一方からの解約通知をすれば、懲戒処分の前に自ら退職するという手段を取ることができます。

しかしながら、公務員は、民法の適用外で、「辞職の実現には任命権者の行政行為に待たなければならない。」という特殊なルールとなっています(森園幸男ほか編『逐条国家公務員法』(学陽書房,全訂版,2015)647頁)。勝手に解約通知である退職届を出しても、自動的に契約解消されて退職できるわけではないのです。

そして、辞職を申し出た職員について非違行為(今回でいうところの盗撮)が明らかになり、懲戒処分に付する必要がある場合には、辞職を承認することなく懲戒手続に付することができるのです。

よく、報道などで「公務員の懲戒処分を発表しました。同日付で、その公務員は依願退職しました」ということばを見かけるかもしれませんが、これは、その公務員はずっと退職を申出ていたが、懲戒処分がなされたことでやっと退職できたという意味なのです。

なお、実際に懲戒処分がなされるのは、刑事事件の裁判が終わったあとになります。実際の懲戒処分の審査は、刑事事件の判決が出てから動き出します。それまで、どれだけ退職したくても、公務員である以上、退職することは許されないのです。事件が起きてから数年たってから懲戒処分を言い渡されているのは、このような事情があるからなのです。

 

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執筆者情報

杉浦 智彦Tomohiko Sugiura

弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士