コミック本を盗んだ疑いで、女性が逮捕されたとの報道!?
1 事件の概要
書店でコミック本3冊(販売価格合計1496円)を盗んだとして、25歳無職の女性が逮捕されたという報道がありました。
女性は、窃盗事件の現場となった書店を出た後、近くの別書店を訪れていたそうです。その別書店の関係者に「過去に万引きをした人が来ている」と通報されたことで、警察が来て調べられ、その場で逮捕になったということです。警察が、余罪についても捜査をしているということです。
今回は、この事件をもとに、店舗での万引き事件の弁護活動を解説します。
2 回数が増えるほど万引き事件は逮捕の可能性が上がる
今回の事件で女性は、第2の書店に訪れていた際に、第2の書店関係者に通報されて逮捕に至っています。「過去に万引きをした人が来ている」という第2の書店関係者の通報内容からすると、どうやら女性は、第1の書店でした万引きを理由に通報されたわけではなさそうです。つまり、今回の事件現場とは別の店でも、万引きをしていた可能性があるのです。
普通、店舗でコミック数冊を盗んだとしても、それが初めてのことであれば、店舗もすぐ警察に通報することはなく、店限りの注意にとどめる可能性もあるところです。しかし今回では、第2の書店に女性が訪れただけで警察に通報がされています。第2の書店は、過去の被害状況から、女性が再び店舗に入ってきたら今度こそ通報しようと考えていた可能性があります。
初めての万引きでいきなり逮捕にまでなってしまうという確率もやはり多くないことからしても、女性が過去に複数の窃盗をした疑いを持たれているため、逮捕された側面が強いかもしれません。
3 逮捕された万引き事件の弁護活動
逮捕されたとはいえ、万引き事件を素直に認めて被害品を返還できれば、何日かして釈放される可能性もあり得るところです。
しかしながら、今回の事件では、女性が過去にも万引きをした可能性を疑われており、警察に余罪捜査をされてしまっています。
このような場合、警察も余罪のことを取り調べるために、女性の身柄を拘束し続ける可能性が高くなってきます。
しかも、身体拘束にはタイムリミットがあるので、検事はそのタイムリミットの中で、女性に下す処分を決め、事件を一つ一つ起訴していく可能性が高いです。
したがって、このようなケースで依頼を受けた弁護人は、限られた時間の中で、検事の起訴を阻止すること、女性をなるべく早く解放することを並行して試みることになります。両方の課題に共通して重要な弁護活動が、示談交渉です。
被害店舗に全額被害弁償をし、上乗せで謝罪金を支払い、店舗に立ち入らないことを誓約するなどした末、刑事処分を求めないようにしてもらうことが出来れば、その事件は不起訴になり、その事件での身体拘束も解かれる可能性が高くなります。
4 店舗型窃盗での示談の難しさ
もっとも、店舗には会社としての社会的な立場があり、店舗から刑事処分を求めないという言質をとることは、個人の被害者を相手にするよりも難しいです。
今回の女性は、第1の書店に被害弁償を求められるだけでなく、第2の書店にも、これまで分かっている範囲での被害額を清算するように求められるでしょう。これらの事件全部について示談を成功させ、不起訴を獲得することには、高いハードルがあります。
女性が初犯であれば、どんな刑事裁判の手続きになっても、万引きでいきなり刑務所に入る可能性はかなり低いですので、そういった見通しを弁護士と相談した上で、返せる範囲で被害弁償だけして、いっそ刑事処分を仰ぐというのも、一つの考えです。
5 余罪のある窃盗事件は経験のある弁護士に相談下さい
このように、余罪のある窃盗事件で逮捕されてしまうと、時間的な誓約が生まれるだけなく、処分の見通しが複雑になり、被疑者の弁護に経験や器量が求められます。
余罪を抱えてしまっている方、家族が捕まってしまった方は、弊所までまずご相談下さい。
執筆者情報
原田 大士Daishi Harada
弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士