「内申点を加点」と女子生徒を水着に着替えさせ盗撮…公立中元教諭に懲役3年6月求刑
執行猶予になる可能性はあるの?
1 事件の概要
千葉県内の中学校で、内申点をちらつかせ、計6回にわたって女子生徒計10人を水着やユニホームなどに着替えさせ、盗撮を繰り返していたなどとして、準強制わいせつ罪と児童買春・児童ポルノ禁止法違反などに問われた公立中学校元教諭の男(懲戒免職)の公判が令和3年10月5日、千葉地裁で行われました。検察側は懲役3年6月を求刑し、弁護側は執行猶予付き判決を求めて結審し、あとは判決を残すのみとなったとのことです。
この記事では、検察側から、懲役3年6月が求刑された場合、執行猶予になる可能性があるかを解説します。
2 執行猶予がつけられる条件
(懲役刑の)執行猶予は、有罪判決をうけても、猶予期間に犯罪を行わなければ刑務所に行かず、懲役刑を受けなくてもよいという制度です。
一度刑務所に行ってしまうと、社会と切り離されて、社会復帰が難しくなります。しかしながら執行猶予だと、社会内で反省しながら生活をすることができるため、社会復帰がしやすいといえます。
刑罰の全部について執行猶予がつけられる要件は、刑法で決められています。不正確なところはあるのですが、ざっくり言うと、次のいずれか2つの場合だけです。
①5年以内に懲役・禁錮などの刑罰を受けたことがない
→言い渡されるのが3年以下の懲役ならば執行猶予をつけられる
②懲役禁錮の刑罰を受けたが執行猶予されている人
→言い渡されるのが1年以下の懲役ならば執行猶予をつけられる
3 求刑と執行猶予の関係
弁護人にとって、求刑が3年を超えるかどうかというのは、一つの関心になります。それは、検察官も執行猶予を見据えているかがわかるからです。
理屈上は、懲役3年以下でも、執行猶予がつかず、実刑になる場合もあります。そのため、求刑が3年以下の場合で検察官が刑務所に行く実刑判決を求めている場合は、単に「懲役3年を求刑します」だけではなく「懲役3年の実刑判決を求めます」などという言い回しになることも多いです。そして、とくに言及がなされない場合は、執行猶予であることが前提に裁判が進められることになります。
そして、懲役3年6月の求刑の場合、法律上は、執行猶予をつけられないので、求刑の段階で「実刑」であることに言及してもらえません。そのため、検察官が実刑まで本気で求めているのかは判断できません。
しかしながら、これまでの経験から考えると、懲役3年6月の求刑がされている場合、それなりの確率で、懲役3年で執行猶予つきの判決を言い渡されている事例が多いように思います。
検察官も、懲役3年6月の求刑をしている場合、かならず刑務所に入れる気というわけではなく、執行猶予の可能性も含めているのではないかと推測しています。
執筆者情報
杉浦 智彦Tomohiko Sugiura
弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士