女子トイレにカメラを設置して盗撮して逮捕。どんな場合に犯人が特定される?なぜ迷惑行為防止条例ではない?

1 報道の概要

今年4月、当時勤務していたさいたま市内の中学校の女子トイレに小型カメラを設置し、女子生徒を盗撮して動画を保存したという、児童ポルノ製造・建造物侵入の疑いで今年9月1日に逮捕されました。

警察によりますと、保存された動画を調べる中で、容疑者の自宅などが動画に映り込んでいたことから逮捕に至ったということです。調べに対して、容疑者は容疑を認め、「中学生くらいの女の子に興味があった」などと供述しているということです。

警察は別の女子生徒を撮影した動画も確認されていることから余罪についても調べているとのことです。

 

2 女子トイレの盗撮案件は逮捕の可能性が高い

トイレの盗撮案件は、その撮影された場所の評判にも影響するというのもありますが、なによりも市場で販売されるような悪質案件の可能性もあるため、単純な盗撮案件よりも逮捕の可能性が高い事件だといえます。

捜査官も、被害者の意向、市場販売によってさらに名誉が害されることにならないよう犯人特定のため全力で捜査を行うことが多いです。

それでも、犯人特定に時間がかかることが多く、本件事件のように、事件があってから5ヶ月程度で逮捕に至るという事例も多いです。私が経験したものでも、犯人特定まで半年~1年程度かかったものもありました。

 

3 どのようにして犯人を特定するか

トイレの盗撮事件の場合、ほとんどが①現行犯で見つかるか、②カメラが発見されて、そこから特定されるかのどちらかです。
カメラが発見された場合、そこから犯人がどのように割り出されるのでしょうか。

カメラ自体は市場で販売されるような一般的なものが多いので、カメラの購入の足取りから犯人特定に至ることは少ないように思います。

たとえば、①カメラやSDカードに残された指紋からの犯人特定、②周囲の監視カメラからの特定、③撮影データを復元し、その中で犯人が特定されるような情報(GPSデータ、自宅の映像、車やバイクのナンバーの写真など)からの犯人特定が多いように思います。

 

4 カメラをおいて逃げてしまったら?

カメラをおいて逃げてしまった場合、先に述べたような方法で本人特定がされる可能性があります。逮捕の可能性もある案件なので、自首をして逮捕が回避できるよう動くことも有効な手段だといえます。

 

5 迷惑行為防止条例違反と児童ポルノ製造罪の境界線?

一般的には、お手洗いの盗撮は、迷惑行為防止条例で検挙することが多いです。

しかしながら、学校のトイレに設置するような場合など、明らかに未成年が使う可能性が高い場所に設置し、実際に陰部の撮影がされていた証拠があるような場合は児童ポルノ製造罪で検挙されていることが多いように思います。

今回も、迷惑行為防止条例ではなく児童ポルノ製造罪の疑いで逮捕されていますが、そのような事例だったのではないかと推測しています。

 

6 刑罰の重さは?

初犯で、それほど余罪がなければ罰金刑で終わることも多いでしょう。しかしながら、余罪多数で市場販売をしていたりするようなときは、正式裁判の上で懲役刑となる可能性もあります。

被害者と示談交渉を行い、刑罰を下げる活動をすることが望ましい案件だといえます。

また、被害者と示談ができれば、不起訴処分となる可能性もゼロではない事件だといえます。

 

 

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執筆者情報

杉浦 智彦Tomohiko Sugiura

弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士