複数回にわたって痴漢行為をしたとして、男性を停職4月の懲戒処分との報道!?

1 報道の概要

通勤中の電車内などで複数回にわたって痴漢行為をしたとして、三重県は4日、松阪建設事務所の男性主事を停職4月の懲戒処分としました。

県によると、男性主事は県立高校の職員だった令和元年7月9日、伊勢市内の路上で歩行中の女子高校生に背後から自転車で近づいて尻を触り、同2年9月8日も通勤中の電車内で女子高校生の尻を触ったそうです。

伊勢署は今年5月、男性主事を任意で事情聴取し、県迷惑防止条例違反容疑で書類送検した。津地検伊勢支部が7月に男性主事を略式起訴し、伊勢簡裁が罰金30万円の略式命令を出していました。

 

2 迷惑行為防止条例違反の刑事処分

痴漢行為(都道府県の迷惑行為防止条例違反)の法定刑は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金ですが、初犯であれば20万円から30万円の罰金となることが多いといえます。

ただし、同種の前科や前歴があれば、罰金額が増えたり、正式裁判により懲役刑となる可能性もあります。

また、前科や前歴があったり、繰り返し行った場合は、常習痴漢行為(2年以下の懲役または100万円以下の罰金)という別の犯罪となることもあります。触り方によっては、暴行罪や強制わいせつ罪となる場合もあります。

 

3 迷惑行為防止条例違反の懲戒処分

一般的には、犯罪行為そのものだけでなく、最終的な刑事処分(起訴か不起訴か、罰金か懲役か)などによって、人事上の処分は異なります。公務員の場合、不起訴(起訴猶予)でも何らかの処罰はありえますし、禁固刑以上であれば、執行猶予が付いても自動的に失職します。

今回は罰金ということで停職4カ月でしたが、(業務上の犯罪ではなく)私生活上の犯罪ですと、よほどの重大事件でない限り、なかなか免職にはならないと思われます。これには、あくまで私生活の問題であって、業務の適否とは無関係であるという発想が前提にあります。

 

4 弁護活動

弊所では、このような迷惑行為防止条例違反のケースで、出来る限り刑事処分や人事上の処分を軽くするためのお手伝いをしております。
このような事件では、基本的に、被害者との示談が重要です。また、示談と言っても、単純に民事上の解決をするのではなく、被害届を取り下げたり、「刑事処分を求めない」といった示談書を取り交わすなど、刑事処分を軽くするための対応が必要です。また、被害者との交渉が満足にいかない場合などは、検察官との交渉を行います。

示談交渉にあたっては、誠意をもって謝罪の意思を示すと共に、事件場所に近寄らないなど、通勤経路、生活圏行動圏の変更を行い、安心してもらう必要があります。最終的に、損害賠償金、示談金を受け取ってもらい、刑事処分を軽くするための協力をしてもらえないか依頼します。

被害者対応が終われば、あとは、検察官と交渉をし、出来るだけ刑事処分を軽くしてもらえないかどうか交渉します。

被害者と示談が成立し、処分ついて軽くする方向での意見がもらえれば、通常は、不起訴(起訴猶予)になることがほとんどです。同種前科があっても不起訴になったケースもあります。不起訴は、起訴されない=懲役や罰金など刑事罰を受けないことを指し、前科がついてしまうことを避けられることになります。

また、不起訴の場合でも罰金の場合でも、人事上の処分も軽くする交渉を行うことは可能です。有利な証拠や事情を提示し、懲戒委員会などの聴取の際に、弁護士から意見書を出すことも可能です。

ご不安な方は、現状を問わず、すぐにご相談ください。

 

 

 

執筆者・石崎 冬貴の写真

執筆者情報

石崎 冬貴Fuyuki Ishizaki

弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士