盗撮の被疑者が、「腕の曲げ伸ばしでしびれを取りたかった」と主張!?
1 報道の概要
出勤途中の駅のエスカレーターで女性のスカートの中にスマートフォンを差し入れ盗撮したとして、迷惑防止条例違反の現行犯で男が逮捕された。エレベーターを上り切ったところで、目撃者に追及されて逃げようとした男を、駆け付けた駅員が取り押さえた。 警察がスマートフォンを調べたところ、女性のスカートの中などが撮影された1分程度の映像が残されていた。 調べに対し男は「女の人に対してスマホを出したりひっこめたりしたのは、腕の曲げ伸ばしをして、しびれを取りたかったから」と容疑を否認している。
以上の事案をもとに、法的に問題となる点を解説します。
2 偶然撮影されていた場合は、盗撮か?
今回の事案の男性は、腕を曲げ伸ばししていたところ、偶然に撮影されていたと話しています。これが本当だとした場合、盗撮は成立するのでしょうか。
盗撮犯は、故意に犯罪を起こした場合にのみ、成立します。過失で起こした場合には、犯罪とならないのです。この点、例えば交通事故の様に、過失で起こした場合でも犯罪となるものとは異なります。
問題は、本件事案のような「言い訳」が真実と認められる可能性があるかということになります。
3 言い訳の事例
多くの事件を弁護していると、びっくりするような「言い訳」を聞くことがあります。覚せい剤が検出された被疑者が、「バーで隣の人が怪しかった。私のグラスに無断で覚せい剤を入れたに違いない」と主張したケースもありました。他人の家に侵入して、物を持っているところを捕まった人が、「気が付いたらなぜか手にくっついていた」と説明したこともあります。
ただ、あまりに常識はずれの言い訳だと、信ぴょう性はほとんどありません。かえって、本人が全く反省していないと取られてしまう恐れも出てきます。
4 本件の弁護活動
本件のような言い訳を被疑者がしているときの弁護士の活動はかなり悩ましいです。自分の依頼者を疑うようなことは、弁護士としてできません。その一方、常識はずれの言い訳を続ければ、かえって被疑者の処分が重くなり、本人に不利になることも予想されます。
いずれにしても、本人と時間をかけてよく話し、適切な解決策を見つけ出す必要があります。また、どちらにしても被害者がいる事案なので、「たとえことさらしたのではなくても、結果として大変不快な思いをさせてしまった」ということで、十分な損害金を支払うことで、被疑者の主張を変えることなく、示談にすることも大切な弁護活動となります。
5 盗撮事件を起こした方は、すぐにご相談ください
弊所では、多数の盗撮事案の弁護活動を行ってまいりました。
刑事弁護として、被害者との示談交渉、治療としての入院、親族との連絡、検察官との交渉まで、あらゆる面でサポートをするのみならず、職場との連絡・交渉、場合によっては超過処分等を争うこともいたします。
事件を起こした方は、できるだけ早くご相談下さい。
執筆者情報
大山 滋郎Jiro Oyama
弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 代表弁護士