釣り具のリール窃盗の見張り役が出頭
自首になるの? 効果は? 刑罰は?
1 報道の内容
2021年3月11日午後11時23分ころに熊谷市内の店舗で釣り用リール10個(37万7000円相当)を盗んだとして、実行犯の男1人が逮捕されていましたが、さらに、見張り役の男が逮捕されました。
見張り役の男は、家族と話したり、報道を見て逃げられないと思い、自ら熊谷警察署に出頭したとのことです。
2 自首の成立要件
この見張り役の男は、自ら警察に出頭しています。これは「自首」に該当するのでしょうか?
「自首」は、罪を犯した人が、まだ捜査機関に発覚する前に、自ら進んで捜査機関に対して、自己の犯罪事実を申告し、その処分を求めることをいいます。
ここでいう「捜査機関に発覚する前」というのは、犯罪自体が発覚していないというだけでなく、誰が犯人か分かっていないということも指します。ただし、犯人に目星がついていて、ただどこにいるか分からないというだけでは、自首は成立しません。
今回は、監視カメラにはっきり映っていたようなので、見張り役の男も特定されていた可能性があり、自首が成立しない可能性があります。
3 自首になる場合の効果 自首にならない場合の効果
自首になった場合、刑法では、「その刑を減刑することができる。」と定められています。つまり、刑罰を下げる効果があるといえます。また、自首にならない場合でも、自ら警察に出頭していることは、反省していることの一事情と考えられるため、刑罰を下げる事情になるといえます。
また、自ら出頭することは、反省の態度、及び「逃げも隠れもしません」という態度の現れですので、逮捕の可能性を下げる効果もあるといえます。今回の事例は、報道等で伝わっていたことが影響し、誰が考えても「逃げられない」という状況であったため、出頭したことが反省している事情として重視されなかったのではないかと思います。それによって逮捕されたのではないかと思います。仮に、報道が出る前に自首をしていれば、逮捕は避けられたのではないかと推測されます。
4 刑罰は?
あくまで弁護士の経験というところですが、被害額が10万円を超える万引きの案件は、初犯であっても罰金では済まず、懲役刑となっているように思います。
今回の立場は、見張り役という立場ではあります。たしかに実行犯よりかは刑罰は軽い傾向がありますが、そもそも集団で窃盗を行うということが悪い事情として考えられており、見張り役だからといって刑罰が特段軽くなるということはないように思います。
被害金額が、懲役刑になるギリギリのラインであれば別ですが、今回のような事案であれば、仮に自首が成立しても、示談しなければ罰金では済まない可能性が高いのではないかと思われます。
このような事件では、示談を行うことができるかが決定的に重要です。仮に被害店舗と示談ができれば、不起訴を狙うことも可能な案件だといえます。
5 まとめ
この事件は、見張り役の出頭のタイミングが遅かったために逮捕もされてしまっている案件です。
もしご家族がこのような行動をしてしまったと気づいたら、速やかに弁護士に相談し、逮捕を回避し、さらに示談活動をして不起訴を目指していくのが望ましいといえます。よければ、当事務所までご相談いただければと思います。
執筆者情報
杉浦 智彦Tomohiko Sugiura
弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士