腹を立てタクシー会社社員を殴った70代男が逮捕されたとの報道!?
1 事案の概要
1月24日、北海道は室蘭市で、71歳の男が暴行の疑いで現行犯逮捕された。
男は、24日の午後3時ごろ、同市内のタクシー会社において、60代の男性社員の顔を殴った疑いがもたれている。男性社員に怪我はなかった。
男は、事件の直前にタクシー会社に電話をしていて、その際の会社の対応に立腹し、「電話対応が悪い」などと怒鳴りながら会社に現れたという。
男は、室蘭市在住、71歳の無職だというが、いずれの事項も自称であり、確認はとれていないとのこと。
以上の事案をもとに、問題となる法的論点を解説します。
2 暴行事件における逮捕の可能性
暴行事件においては、必ずしも逮捕されるわけではありません。
暴力をふるった結果として被害者の方が怪我をしていた場合は、暴行罪ではなく傷害罪が成立します。ですから、暴行事件においては、当然ながら被害者の方に怪我はありません。その点において、暴行罪は、犯罪としては比較的軽微な部類に入ります。
そのため、暴行事件においては逮捕されないこともあるのです。
3 何故本件では逮捕されたのか
ではなぜ、本件は暴行事件であるのに逮捕されたのでしょうか。
警察が犯人を逮捕するには、「逮捕の必要性」が認められる必要があります。これは、逮捕状による通常逮捕だけでなく、本件のような現行犯逮捕においても同様と考えられています。そしてこれは、逃亡又は罪証隠滅のおそれがあるか、という観点から判断されます。
そのうえで本件についてみてみると、まず、わざわざ怒鳴り込んできたうえで顔面を殴るという、暴行行為の悪質性が高いという事情があります。
また、男の素性が、住居・年齢・職業のすべてが自称であり、身元の確認が取れていなかったという事情もあります。身元の確認が取れていないまま逮捕せずに犯人を帰した場合、犯人がそのままどこかへ行ってしまうということは十分考えられます。
このような事情があることから、男が逃亡するおそれがある、と判断されたのかもしれません。
4 暴行事件における弁護活動
暴行事件においては、不起訴処分で事件を終わらせることが一番の目標といえます。
そしてそのために最も重要となるのが、被害者の方との示談です。被害者の方と示談をすることができれば、不起訴処分となる可能性は十分にあります。
また、本件のように逮捕されてしまっている事案では、この後に検察官によって勾留され、10日間以上の身体拘束を受けるおそれもあります。そのため、早期の身柄解放に向けて、上記示談を進めるほか、本人の反省文、家族による身元引受書などを準備して、検察官による勾留が行われないよう積極的な活動を展開していくことが重要となります。
5 暴行・傷害事件を起こしてしまった方は、すぐにご相談ください
弊所では、さまざまな事案の暴行・傷害事件について、多数の弁護活動を行ってまいりました。
被害者の方との示談交渉から検察官との交渉まで、あらゆる面でサポートをさせていただきます。
執筆者情報
越田 洋介Yosuke Koshida
弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士