女性のスカート内を盗撮した大学生の男を逮捕 動画をネットで販売し、820万円の売上との報道!
1 報道の概要
逮捕されたのは21歳の大学生の男。2020年2月初め、東京都・渋谷駅に停車していた電車内にて、立っていた20代の女性のスカートの中にスマートフォンを差し入れ、女性の下着を撮影した容疑により、盗撮行為から1年近く経過してから逮捕された。
警察が押収した男の端末を確認したところ、女子高校生などを含む若い女性のスカート内を盗撮したとみられる動画が600本ほど保存されており、うち50本ほどがインターネットの販売サイトで販売されていた。
サイトでは「本作は盗撮風動画で、フィクション作品です」といった謳い文句が記載されていた。男は2020年11月までの10か月で820万円を売り上げていたという。
以上の事案をもとに、問題となる法的論点を解説します。
2 盗撮事件の後日逮捕
本件は、問題の盗撮行為から1年ほど経ってから犯人が逮捕されたという、いわゆる後日逮捕の事件です。
通常、盗撮行為は、現行犯の場合以外では逮捕されることは多くありません。例えば、別件で携帯が押収され、その中に盗撮画像と思われる写真が多数入っていた場合でも、基本的に逮捕されることは少ないのです。これは、盗撮画像だけでは、その人が盗撮行為をしたということの立証が困難なためです。
逆にいうと、駅の防犯カメラ等によって、その人が盗撮行為をしたことが立証できるのであれば、盗撮行為から時間が経っていても、また被害者の方が誰か分かっていなくても、後日、被害者不明のまま逮捕されるということもあり得ます。
本件では、大々的に盗撮画像を販売していたという悪質性から、捜査機関が盗撮行為の立証のための証拠を集め、後日逮捕に踏み切ったものと考えられます。
したがって、本件のような悪質性のある事件では、同様に後日逮捕がなされる可能性があります。
3 児童ポルノ関連の罪及びわいせつ物頒布等の罪が成立する可能性
本件のような事件において、盗撮以外にも成立する罪がないのかをみていきます。
本件においては、女子高校生などの未成年も盗撮していたこと、盗撮した動画をインターネットで販売していたことが、それぞれ児童ポルノ関連の罪とわいせつ物頒布等の罪に違反しないか問題となります。
もっとも、本件のようにスカート内を盗撮したという事案では、映像には下着が映っているにとどまると考えられることから、それぞれ「児童ポルノ」の定義、「わいせつ」の定義に該当せず、罪は成立しないと考えられます。
4 名誉棄損罪が成立する可能性
本件では、「本作は盗撮風動画で、フィクション作品です」という謳い文句が添えられて販売されていたとのことです。これは、盗撮された女性について、「盗撮動画の作成に協力する人物である」といった事実と異なる印象を与えるもので、女性の名誉を深く傷つけるものです。
映像に女性の顔などが映っているかにもよりますが、名誉毀損罪が成立する可能性はあります。
5 本件における弁護活動
いままで見てきたように、本件では盗撮行為の罪以外に、名誉毀損罪が成立する可能性があります。
また、未成年を含む多数の被害者がいること、動画をインターネットで販売していたことが、情状において考慮されることが考えられます。つまり、行為態様や犯行動機などが悪質であるとして、厳しい処罰を求められることがありうるということです。
そこで、本件では、盗撮事件で重要な被害者の方との示談は勿論のこと、それ以外にも可能な限りの有利な事情を積み重ねることができるような活動が求められます。
具体的には、本人の反省を表す謝罪文を作成する、家族が本人を厳しく監督することを誓う誓約書を作成する、性依存症の治療を行うクリニックにおいてカウンセリングを受けるなどです。
そして、まずはこれらの資料をもとに、検察官と処罰について交渉していくことが重要となります。
6 盗撮事件を起こした方は、すぐにご相談ください
弊所では、さまざまな事案の盗撮事件について、多数の弁護活動を行ってまいりました。
被害者様との示談交渉、性依存症の治療としての入院、親族との連絡、検察官との交渉まで、あらゆる面でサポートをさせていただきます。
執筆者情報
越田 洋介Yosuke Koshida
弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士