自衛隊員が電車内で女性に痴漢行為!?
1 報道の概要
陸上自衛隊員が、電車内で女性に痴漢行為をしたとの報道がありました。当該自衛官は、面識のない女性の下腹部を触ったとして、県迷惑防止条例違反容疑で逮捕されたとのことです。自衛官は、容疑を認めた上で、女性と示談し、不起訴処分になりましたが、その後停職4カ月の懲戒処分になった日に、依願退職したとのことでした。
2 「痴漢」と「強制わいせつ」
女性の腹部を触る行為は、強制わいせつ罪になってもおかしくありません。強制わいせつの場合、刑法181条によると、3年以上の懲役刑と、非常に重い罰則が定められています。一方、いわゆる「痴漢」行為には、迷惑行為防止条例が適用されて、1年以下の懲役か、100万円以下の罰金が法定刑とされるのが通常です。(条例で定められますので、都道府県ごとに、法定刑の重さも少し違います。)
また、痴漢による条例違反の場合は、必ずしも逮捕されない場合が多いですが、強制わいせつとなりますと、まず間違いなく逮捕されます。
一般的には、電車内での痴漢の場合、下着の中にまで手を入れたような場合には、強制わいせつ罪とされる事案が多いと言えます。本件は、条例違反なのか強制わいせつ罪なのか、かなり微妙な事案だったのかもしれません。
3 示談と不起訴処分
性犯罪の場合、示談が行われれば、少なくとも初犯の容疑者なら、不起訴処分とされることが多いと言えます。これは、迷惑行為防止条例違反の場合のみではなく、強制わいせつ罪の場合であっても同様です。少し前の刑法改正で、強制わいせつ罪が親告罪ではなくなった後でも、同じように言えます。
また、条例違反の場合ならば、必ずしも示談ができなくても、被害者側の処罰意志が強くないような場合には、罰金相当額を寄付することなどにより、不起訴となる可能性もあります。
今回の事案は、迷惑行為防止条例違反であり、示談が行われたことから、不起訴処分となったものです。
4 停職処分と依願退職
不起訴となるかどうかで、勤務先の対応は大きく変わってきます。罰金等で有罪となった場合は、懲戒解雇される可能性も否定できません。一方、不起訴となったときには、かなり軽い処分が勤務先でなされる可能性があります。
しかし、世間一般の公務員に対する風当たりが厳しい中、公務員の起こした痴漢や盗撮の事件に対する処分はかなり厳しくなります。
停職処分がなされたら、通常は退職せざるを得ないでしょう。本件でも被疑者は退職を選択しました。ただ、退職と懲戒解雇では、退職金の有無や今後の職探しなどに影響が出ますので、取り敢えず解雇されなかっただけでも、示談による不起訴がなされてよかったといえるのです。
5 痴漢行為をしてしまったという方は、すぐにご相談ください
弊所では、これまでも、多くの痴漢事件(迷惑行為防止条例事件はもとより、強制わいせつ事件)の弁護活動を行ってまいりました。
自首の同行、被害者との示談交渉、検察官との交渉まで、あらゆる面でサポートをさせていただきます。
執筆者情報
大山 滋郎Jiro Oyama
弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 代表弁護士