• 盗撮前科のある被疑者の事例

    • 罪名:迷惑行為防止条例違反
    • 最終処分:不起訴
    • 依頼者:本人
    • 解決までの期間:4か月

    01.事件発覚からご依頼まで

    以前に比べて、盗撮事件の処罰は厳しくなっています。常習の場合について厳しく罰する条例の改正も行われています。
    スマートフォンの普及により、巧妙な盗撮事件が増えていることが背景にあるのでしょう。
    初犯であれば、「示談が出来れば不起訴」というのが一般的ですが、盗撮や痴漢など同種の前科がある人は、示談が出来ても罰金となることが多いと言えるでしょう。
    本件の依頼者は、5年ほど前に盗撮事件で罰金20万円となっていました。
    ところが再び、通勤途中の電車内で盗撮事件を起こしてしまったということで、ご依頼となりました。

    02.弁護活動の流れ

    検察官に対して、再度、不起訴とする余地がないか協議しましたが、やはり、以前罰金刑となっているものを今回不起訴にはできないと、当初は非常に冷たい回答でした。
    以前、同じ事件で処罰を受けたにもかかわらず、また同じ犯罪を起こしたわけですから、当然と言えば当然です。むしろ、正式裁判(公判請求)となってもおかしくない事件です。
    しかし、現在は、刑事事件の手続きの中にも、できる限り被害者の意向を尊重しようという流れが強まっています。
    その点をよく説明したところ、被害者が、被害届を取り下げるなど、本当に刑事手続きを望まないということであれば、不起訴も検討するというところまで説得することが出来ました。
    その上で、被害者と何度も協議し、示談金額の増額や現在の職場の退職、事件を起こした電車や駅を使用しないことや専門医療機関の受診などを誓約することで、なんとか示談をまとめ、被害届も取り下げてもらうことができました。

    03.弁護士からのコメント

    刑事事件の相場からすると、依頼者の要望に応えることが厳しい事件はたくさんあります。
    弊事務所では、もちろん、しっかりと相場を伝え、厳しい見通しもお伝えした上で、それでもご依頼いただいた場合には、たとえ常識的には難しい事案でも、最後まであきらめず弁護活動を行うようにしています。
    他の事務所で断られた事件でも、ぜひ一度、ご相談ください。

  • 被害者不明で示談ができなかったものの贖罪寄付により不起訴になった事例

    • 罪名:迷惑行為防止条例違反
    • 最終処分:不起訴
    • 依頼者:本人
    • 解決までの期間:3か月

    01.事件発覚からご依頼まで

    依頼者は、駅の階段で、スマートフォンを使って盗撮していたところを、私服警官に見つかりました。
    「盗撮していましたね、署まで来てもらえますか。」そんな問答をしているうちに、被害者はその場を離れてしまいました。
    通常は、被害者に声をかけて、その場に留めつつ、被疑者を確保する形で進めます。駅などの雑踏ですと、みな急いでいますから、少しでもタイミングが遅れると、その場で関係者は立ち去ってしまいます。警察としても、手痛い失態といえます。ただ、盗撮しているところを警官が見ていますし、データも残っていましたので、盗撮の証拠は充分揃っており、刑事事件化しました。
    依頼者としても、被害者がいない中で、対応に悩み、相談に至りました。

    02.弁護活動の流れ

    被害者が不明である以上、当然、示談はできません。担当検察官としては、示談ができていない以上、処罰せざるを得ないとのことでした。被害者が不明の場合、被害者の意向が分かりませんので、それを、「許していない」と取るか、「処罰を求めるか分からない」と取るか、事件や担当検察官によって異なるのが実情です。本件では、前者の考え方をする検察官でした。
    そこで、この事件では、本人に有利な事情を積み重ねることにしました。
    本人には、たとえ受け取ってもらえないにせよ、反省の気持ちを表すために、謝罪文を書いてもらいました。また、性犯罪を繰り返す人の治療を専門的に行っているクリニックを受診してもらい、性嗜好障害(またはそのおそれ)について、カウンセリングを受けました。
    その他、盗撮に使われやすいスマートフォンを解約し、カメラ機能の無い携帯電話を使ってもらう、家族に監督文を書いてもらい、本人の監督、行動の制限などを誓約してもらうなど、再犯防止につながることは全て行いました。
    その上で、一般的な示談金と同程度の金額を、慈善団体に寄付してもらいました。(このような寄付を贖罪寄付と言います。)
    最終的に、これらの資料を全てまとめ、これまで事務所で取り扱った同種事案も説明した意見書を作成し、検察官と交渉したところ、不起訴としてもらうことが出来ました。

    03.弁護士からのコメント

    被害者がいる事件では、一般的には示談交渉が極めて重要であり、ほぼ示談一本勝負といっても過言ではありません。
    しかし、事件の中には、被害者がいるが特定できてない、被害者が示談をやり取りを拒否しているといったケースも当然存在します。
    そうした厳しい事案でも、できることは多数あります。弁護人としては、諦めず最後まで弁護活動を行う姿勢が重要でしょう。

  • 異例の処分をする検察官に他の事例を見せて不起訴となった事例

    • 罪名:迷惑行為防止条例違反
    • 最終処分:不起訴
    • 依頼者:本人
    • 解決までの期間:5か月

    01.事件発覚からご依頼まで

    本件は、事件としては単純な電車内での盗撮事件でした。依頼者は、逮捕こそされませんでしたが、その場で被害者から指摘され、被害届を出されることになりました。今回が初めての事件で、前科前歴などはありませんでした。このままでは、罰金刑となり、前科が付いてしまうということで、ご依頼となりました。
    本件のような初犯かつ単純な盗撮事件の場合、被害者との間で示談ができれば、ほとんどのケースで不起訴処分(起訴猶予)となります。
    示談ができない場合でも、被害者の処罰感情(激怒しているのか、処分は任せるのか、関わりたくないのかなど)を前提に、反省の気持ちや、示談に向けての誠意ある取り組みなどを検察官に理解してもらうことで、不起訴処分としてもらえることもあります。
    少なくとも都市部の検察庁では、多くの検察官がこのような基準に基づいて処分を決定します。

    02.弁護活動の流れ

    このような見通しの中で、具体的な弁護活動を開始しましたが、まれに、このような相場を知らないか、知っていても独自の基準で判断する検察官がいます。特に、他の地域からやってきた検察官や、そもそも盗撮事件などの案件をこれまで取り扱っていなかったような検察官の場合、他の検察官と違った判断をすることが多いようです。本件でも、担当検察官と面会したところ、「迷惑行為防止条例違反の場合は、被害者は一般公衆なのだから、実際に写真を被害者個人と示談しても評価しない。たとえその人が許すと言っても、罰金刑は変わらない。」こういわれました。
    一般的に、検察官は自分の担当する事件について非常に強い裁量を持っていますので、「こうだ」と決めると動かない検察官もいるのです。そこで、これまで事務所で取り扱ってきた100件以上にのぼる迷惑行為防止条例違反事件の結果についての一覧表を作成し、他の事件との均衡を充分に考えるように、そして、検察官によってあまりに処分が違うのならば、裁量権の問題ということで、争わざるを得ないことまで伝えました。
    最終的には示談した上、不起訴となりました。

    03.弁護士からのコメント

    刑事事件に、全く同じ事件はありません。とはいえ、ある程度、これまでに存在した同種の事例に沿って、刑事処分や量刑は決められます。検察庁は、これまでに蓄積した多数の事件について、データベースを使うことが出来ますので、弁護人としても、それに対抗できるだけの豊富な事例と知識が必要です。
    この事件でも、これまで刑事事件に特化した事務所として、事例を蓄積し、データベース化したことが功を奏したといえます。