指導のつもり…部員へ保護者の男が暴行したとの報道!?

1 報道の概要

高校に通う生徒の保護者(男性、40代)が、剣道部員2人の体や頭を踏みつけるなどの暴行を働いたという報道がありました。男性は、柔道部の活動を見に来校したところ、あいさつした剣道部員の態度に腹を立て、同部員15人を叱りつけた後、男子部員2人に対し、防具を着けた体や頭を数分にわたって踏みつけるなどしたといいます。

被害にあった剣道部員の保護者の一人は、被害届を出すか検討していると言います。男性は、「暴力ではなく指導だった」と供述しているそうです。

 

2 指導教育のつもりが、一転犯罪に!?

指導のつもりで体罰をすることは、昔こそ、よくあった事かもしれません。しかし、現在となっては、教育指導やしつけのために人に手をあげれば、基本的には暴行罪になってしまう事実が、世の中にも浸透してきているのではないでしょうか。暴行罪が成立しないのは、相手の有効な同意があるなどの例外的な場合に限られます。

また、相手に手をあげて、それで相手が怪我をすれば、傷害罪にもなり得ます。

暴行罪は2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金になる可能性があります。傷害罪は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金になる可能性があります。

今回、男性は指導だと言っているようですが、自分のお子さんでもない剣道部員を踏みつけたわけですから、同意があったとも言いがたい状況と言え、暴行罪が成立する可能性がとても高いです。防具を着けていたとはいえ、数分も踏みつけにしていれば、怪我をした可能性もあり、そうであれば、傷害罪になるでしょう。

 

3 暴行罪、傷害罪の処分は?

暴行罪と傷害罪の罪の重さは、どんな暴力を振るったか、どれくらいの怪我を負ったかによって大きく変わります。初犯であれば、暴行罪は罰金刑止まりになることがほとんどと言えますが、反省の態度が無かったり、やり方が悪質だったりすると、公判請求といって、正式な裁判になり、懲役刑を求められてしまう可能性も無くはありません。

今回の男性も、もし「指導だった」という主張をし続けるのであれば、それは、情状面でマイナスに評価され、平均よりも重たい処分が科されてしまう可能性はあります。

 

4 暴行傷害事件は不起訴を目指す活動が重要

今回、踏みつけにされた生徒の保護者が、被害届を出すかを検討しているとのことです。こうした事件では、被害届が出たときに、警察が事件として扱うという流れになることが多いです。今回も、被害届が保護者から出されなければ、事件にならず、処罰もされない可能性もあります。

そこで、弁護人としては、まずは被害者への謝罪を男性に勧め、時には間に入って交渉するなどして、被害届を出さないで貰えるように頼み込んでみることが考えられます。

次に、被害届が出てしまった場合には、捜査が進み、送検され、起訴されてしまうリスクが高まります。そこで、弁護人としては、相手の保護者と交渉し、謝罪金を受け取ってもらい、保護者の方に許してもらうという示談の活動をすることになります。示談が成功し、合意書を作成することが出来れば、不起訴で終わる可能性が高いです。

今回、男性は2人の生徒を踏みつけにしています。お一人しか被害届が出ていないのだとしても、後にもう一方から被害届を出されるというリスクを回避するために、2人に対して示談活動をすることが好ましいと言えましょう。

 

5 暴行傷害事件にお悩みの方はご相談下さい

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執筆者・原田 大士の写真

執筆者情報

原田 大士Daishi Harada

弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士