痴漢にあっている女性が私服警官に気づき、地下鉄車内で逮捕との報道!?

1 報道の概要

地下鉄の車内で10代の女性の尻を触った疑いで、札幌の会社員の男がその場で逮捕された。女性が車内にいた私服の警察官に気がつき、その場で申告したため、事件が発覚したとのこと。当時、地下鉄車内には、別の痴漢事件の捜査で私服の警察官数人が乗車していて、警察官に気づいた女性が「今、痴漢にあっています!」と申告したことから警察官がその場で男を逮捕しました。警察によると、男は容疑を認めている。警察は男の余罪についても調べを進めている。

以上の事件をもとに、問題になりそうな諸点を解説します。

 

2 私服警官に気が付くの?

本件では、私服の警察官に被害者が気付いたと報道されています。しかし、私服を着ている人が警察官だと気が付くことは、常識的にあり得ません。おそらく、この女性はすでに警察に痴漢の被害を申告しており、警官の顔を知っていた可能性が高いです。

電車内の痴漢事件で、同じ犯人が、同じ被害者に何度も執拗に痴漢を繰り返す事例はかなりあります。当事務所でも数件扱っています。そのような場合には、被害者があらかじめ警察に相談しており、事件の起きる電車内に警察官が張り込んでいるような場合もよくあります。

 

3 現行犯逮捕できるの?

今回の事案では、警察が現行犯逮捕をすることは認められないはずです。既に痴漢という犯罪行為は終わっており、その後の被害者の申告によって逮捕がなされたに過ぎません。この場合は、法的には現行犯逮捕とは言えません。

本件では、警察も犯行を確認しており、現行犯逮捕をした可能性もあります。または、その場では任意での同行を求め、その後正式に逮捕したという可能性も否定できません。

 

4 余罪の取り調べ

電車内の痴漢事件の場合、通常は余罪の取り調べなどは行われません。本人からこれまでの痴漢行為に関して聞くことはしますが、特に「余罪捜査」と言えるようなものは行いません。調査しようがないという事実上の制約もあるためです。

今回ことさらに余罪について言及されているのは、恐らく同一被害者に対して、他の機会に複数回の痴漢行為に及んでいるからだと推察されます。このような場合は、情状が非常悪く、示談も困難となるので、良くても罰金刑、悪ければ正式裁判(執行猶予は通常つくが)となる可能性が高いです。

 

5 痴漢行為をしてしまったという方は、すぐにご相談ください

弊所では、痴漢事件などの様々な性犯罪事案の弁護活動を行ってまいりました。 

自首の同行、被害者との示談交渉、治療としての入院、検察官との交渉まで、あらゆる面でサポートをさせていただきます。

 

執筆者・大山 滋郎の写真

執筆者情報

大山 滋郎Jiro Oyama

弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 代表弁護士