刑事事件における弁護士の役割

IMG_7213.JPGのサムネール画像 刑事裁判の流れの中で、弁護士がどのような役割を果たすかについて、各手続にそって、説明していきたいと思います。「刑事裁判の流れ」をまだご覧になっていない方は、まずはそちらをご覧ください。   

 

起訴されるまで

逮捕

家族が逮捕されたと突然警察から連絡があった。まず、何はともあれ、逮捕された家族に会って、直接話を聞きたいと思うはずです。ところが、例え家族であっても、逮捕されている人に会うことを認めてもらえない場合があります。(逮捕されている人が証拠隠しの指示をしたり、口裏合わせをしたりすることを防ぐためです)。こんなとき、弁護士であれば、逮捕された人に会って、本人から直接聞いたお話をご家族の皆さんにお伝えすることができます

勾留

逮捕して3日以内に、検察官は、裁判官に対して、勾留を請求します。勾留が長引くと会社を首になってしまう可能性もあります。これに対して、弁護士は、検察官が勾留を請求しないように、検察官と交渉を行ったり、裁判官が勾留を認めないように、裁判官に事情を説明したりしますさらに、裁判官が勾留を認めた場合でも、その決定がおかしいのではないかと、異議の申立てなども行って、勾留が行われないように争います

 

起訴・不起訴の決定

検察官は、逮捕・勾留による身柄拘束の期間内に、事件を裁判所に起訴するかどうか決めるわけですが、この期間は非常に大切です。有罪の事件であっても、逮捕されて身柄を拘束されている間に、家族から誠意をもって被害弁償を行った場合、起訴されずに済む可能性が高くなります。 起訴されなければ、釈放されるのに対し、起訴された場合は、その後も身柄の拘束が続くことになるので、これは非常に大きなことです。また、仮に起訴されても、被害弁償を行ったことは、裁判所に大きく評価してもらえます。刑を軽くするのに、最も効果的なのは、被害者に対する被害弁償です。誠意をもって被害者に謝り、被害を弁償し、もし可能なら、被害者から「寛大な処分を望みます」なんて一筆書いてもらえれば、間違いなく刑は軽くなります。そのため、どちらにしても早く被害弁償をすることが望ましいのですが、弁護士の協力がないと、家族だけでは被害弁償ができないことが多いです。そもそも家族は、被害者が誰なのか分かりません。被害弁償をしようと思っても、相手が誰だか分からない場合が多いのです。かといって、警察から被害者の連絡先を教えてもらおうとしても、お礼参りではないですが、犯人や家族から、何かされるのではないかと言う恐れがありますので、被害者が連絡先を教えることを拒む場合が多いです。その点、弁護士が間に入れば、被害者も多少は安心して、話し合いに応じてくれることもあります

また、よく冤罪事件などで、本当はやっていないのに無理やり自白させられた、という話を聞いたことがあると思いますが、 そういった自白は、家族とも会えず、誰にも相談することができない中で、「どうせ自分の言うことなど信じてもらえないんだ。」と絶望的な気持ちになる中で起こります。そのような状況にある無実の人に、弁護士が面会をし、「本当はやっていないのならば、間違った自白などしてはいけない。」と励ますことで、こういう冤罪事件を防ぐことができます

 

起訴されてから

保釈

起訴された場合、身柄の拘束はさらに続きます。基本的には、裁判が終わるまで続くことになります。どんなにシンプルな事件でも、起訴されてから判決まで、2~3ヶ月ほどはかかります。そこで、一刻も早く身柄を解放してもらうため、保釈を請求することになります。弁護士は、ご家族と話し合い、どのタイミングで保釈を請求するか考えます。また、保釈を認められやすくするために、本人の反省文や、本人の監督を誓う家族の上申書を用意し、被害者へのお詫びなども行います仮に保釈が認められなかった場合でも、その決定がおかしいのではないかと、異議の申立てを行って争ったり、しばらくたってからもう一度請求してみるのか、被害者に弁償してから請求してみるのか、検討します。

裁判の手続

それでは、次に刑事裁判の手続きを見てみます。刑事裁判の手続きの中で、被告人を弁護できるのは、弁護士だけです。その役割は、大変重要です。

起訴状の内容の確認

刑事裁判では、検察官がまず起訴状を読み上げ、被告人が何の罪で訴えられたのかを明らかにします。起訴状を聞いた裁判官は、被告人に、起訴状の内容に間違いないか質問します。被告人の答えを聞いた裁判官は、次に、弁護士の意見を聞きます。

通常は「被告人と同意見です」と答えるのですが、まれに、被告人と違うことを言う弁護士が出てきたりします。普通に考えれば被告人が罪を犯したことに違いないのに、被告人があくまで罪を認めない場合などに起こるようですが、これは問題です。こういった問題のある弁護士は、そうはいません。

しかし、被告人がどんなに不合理なことを言っても、平然と「被告人と同意見です」と言う弁護士は沢山います。被告人が不合理なことを言う場合は、よく話を聞いたうえで、そのようなことを言っても裁判所には認めてもらえず、かえって反省していないと判断されて不利になることを、予め良く説明し、納得してもらわなければいけません。

 

証拠調べの手続き

その次は、証拠調べの手続きに入ります。

検察側の証拠調べ

検察官が出してくる証拠の中でも、 調書(被告人本人や証人から聞いた話をまとめた文書)については、 弁護士がそれを証拠とすることに同意しなければ、 検察官は証拠として出すことができません。 そのため、弁護士が「調書に同意しない」と言えば、 原則として、証人自身を法廷に呼んできて、証言してもらうことになります。 本当のことを言っているのか、うそをついているのか、 弁護士が直接尋問を行い、確かめるわけです。調書に同意するのか、不同意にして証人尋問を行うのか、 弁護士は裁判の前に、証拠を見て、判断することになります。

通常、被告人が無罪を主張しているときには、 不同意にして、証人尋問を行うことになります。たとえ、被告人が罪を認めていた場合でも、 起訴されている事件とは別の事件(余罪)も起こした、 なんてことが書いてある調書は、不同意にすべきです。 刑事裁判は、起訴されている事件についてのみ裁くものであって、 余罪まで裁くものではないからです。つまり、調書を同意するか不同意にするかは、 予め証拠を十分に検討して判断する必要があるわけです。

ところが、弁護士の中には、まれに、予め証拠を確認することを しない人がいて、問題になることがあります。 こういった問題のある弁護士は、そうはいません。 しかし、調書の中に、余罪が書かれているものがあっても、 そのまま同意する弁護士は沢山います。 あまり酷いと、裁判官から、本当に同意して良いんですか、 なんて注意されることもあります。
一方、調書が同意されると、証拠調べも早くに進みます。 早すぎて、被告人や、傍聴している家族には、 何のことだか分からないことがよくあります。 検察官は、かなりの早口で、調書に書かれている 証人の証言の概要をしゃべります。 声の小さい人もいますし、語尾のはっきりしない人もいます。 そもそも、内容を知らない人には、 早すぎて何を言っているのか理解できません。つまり、弁護士が、予め調書の概略を被告人や家族に説明し 、どんなことが話されるのか理解しておかなければ、 聞いていてもほとんど分からないのが、証拠調べです。

調書が不同意になると、証人尋問を行うことになります。 証人尋問は、まず検察官が尋問した後に、 弁護士が反対尋問を行います。 ここが、弁護士としての腕の見せ所でもありますし、 準備のために時間が非常にかかるところでもあります。 弁護士が、検察官の尋問と同じことを繰り返しているだけで、 何にも意味のある尋問ができていなかったなんて、 批判されることもあります。 証人尋問を行う場合というのは、 検察官の主張する事実を争っている場合ですから、 普通は弁護士も力を入れて準備しますが、 中にはそういういい加減な弁護士もいるわけです。

 

弁護士側の証拠調べ

検察官の側の証拠調べが終わると、次は弁護士の番です。 無罪を争っている場合は、 ここで力を入れて無罪の証拠を出すことになります。 刑事裁判が始まる前に、どれだけがんばって 証拠を集めることができたかが問題となります。ただ、通常は、捜査機関でもない弁護士が無罪の証拠を集めるのは、 非常に困難です。 そのため、弁護士の活動も、検察官の証拠では被告人を有罪にするのに 十分でない、と主張することが中心になります。

被告人が罪を認めていて、少しでも刑を軽くするために 弁護活動を行う場合は、 被告人の情状についての証拠を出すことになります。起訴・不起訴のところでもお話ししましたが、 被告人の刑を軽くするのに、最も効果的なのは、 被害者に対する被害弁償です。 誠意をもって被害者に謝り、被害を弁償し、もし可能なら、 被害者に「寛大な処分を望みます」なんて一筆書いてもらい、 それを証拠として出せば、間違いなく刑は軽くなります。
弁護士側の証拠調べでは、情状証人の証人尋問も大切です。 通常は家族に来てもらいます。 情状証人というと、「被告人は、本当はこんなに良い人なんです」 といった証言をしてもらうことを考えるかもしれませんが、 そのような証言は、それほど意味のないことです。 一番大切なのは、情状証人が、被告人が2度と罪を犯さないように、 被告人を十分監督するということを、裁判官に理解してもらうことです。 情状証人が、裁判官が納得するような証言ができるよう、 弁護士は、予め情状証人と十分に打ち合わせをして、 証人尋問に臨まなくてはいけません。
証拠調べの最後に行われるのが、 被告人に対して尋問を行う、被告人質問です。 被告人が無罪を争う場合は、 被告人の主張を丁寧に聞いてあげる必要があります。 また、被告人が罪を認めている場合でも、 被告人に同情できる点があることや、被告人が十分に 反省していることや、今後どうしたいかなど、 丁寧に聞いてあげる必要があります。ここでも、弁護士は予め被告人と十分に話し合う必要があります。 たまに、 被告人質問の際に、被告人のことを叱り付ける弁護士もいます。 それだけならまだしも、被告人に有利な事実を聞かないで 終わらせることもあります。 そういう時は、検察官の方で被告人に有利な事実も聞いてあげたりします。 弁護士として恥ずかしい話です。

 

弁護士の意見主張

こうして証拠調べが終わりますと、検察官と弁護士が、被告人の罪について、順番に意見を述べます。無罪を争う場合は、ここで、なぜ被告人が無罪といえるのか、十分に主張することになります。被告人が罪を認めている場合は、こういう点は同情できるとか、このように反省しているとか、十分に述べて、できる限り刑を軽くしてもらい、できれば執行猶予が付くように主張するわけです。
以上で、刑事裁判の流れの中で、弁護士が果たす役割について、大まかに理解できたと思います。